No.10

ジュリエットの顔は真っ赤になったけれども、夜のおかげでロミオに見られずにすんだ。彼女は、そのつもりはなかったのに、ロミオへの愛を本人に告白してしまったのが恥ずかしかったのだ。できれば言葉を呼び戻したかったが、それは不可能だった。彼女としては、礼儀正しくありたかったし、慎重な令嬢がやるように、恋人に対して距離をおきたかった。恋人に向かってまゆをひそめたり、気むずかしくしてみせたかった。言い寄ってきた人に、最初は冷たくあしらい、はねつけて、深く愛したあとでも、はにかみやさりげなさを身につけていたかった。求婚者たちに、あまりに身持ちが軽く、簡単に手に入るなどとは思われたくなかった。手に入れるのが難しければ難しいほど、その価値は増すのだから。しかし、この場合、ジュリエットにはそういった拒否やはぐらかし、あるいは求婚を長引かせるお定まりのやり方をする余地はなかった。ロミオはすでに、彼がそばにいるとは夢にも思っていなかったジュリエットがもらした愛の告白を、直接聞いてしまっていたのだ。そういった次第で、彼女にとって目新しい状況がそうすることを許したのか、すなおな態度で、ロミオが聞いたことにうそはないと言った。ロミオに「うるわしのモンタギューさま」(恋はすっぱい名を甘くするものだ)という名で呼びかけ、そして、自分がかんたんに心を許したのを、軽率だとか、卑しい心根からだとみないでください、私の落ち度(もし落ち度というのなら)は、心の思いを不思議にも明かしてしまった夜の偶然のせいにしてください、と頼んだ。加えてジュリエットは、ロミオへのふるまいは、普通の女性に比べて分別ある行為だとはいえませんが、慎重とみえてもうわべばかり、遠慮とみえても小細工に過ぎない人たちに比べれば私の方がずっと真実の恋人であることを証明いたしましょう、と言った。


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