No.26

その知らせが来るまで、ロミオは常になく愉快な気分で浮かれていた。その夜、ロミオは夢を見たのだが、その内容はというと、自分が死んでいて(死者に考えることができるとは妙な夢といえる)、それを恋人がやってきて発見し、自分に接吻して命を吹き込むと、彼はよみがえり、皇帝となったのだ。さて、死者がヴェロナから来たので、ロミオはてっきり、夢が知らせた吉報が実現したと思いこんだ。ところが、ロミオを喜ばせた夢は逆夢となってしまい、恋人が本当に死んでしまって、どんな接吻をもってしてもよみがえらせることはできないのだと告げられたのだ。

 ロミオは馬のしたくをさせた。夜になったらヴェロナにいって、墓に入っている恋人を一目見ようと決心したのだ。

 悪い考えは、絶望した人の中にいち早く忍び入るものであるが、ロミオはある貧しい薬屋のことを思いだした。マンテュアにあるその店の前を最近通りかかったのだが、飢えた乞食のような主人の表情、きたない棚の上に空き箱が並べてあるというみじめな有様そのほか極度に貧窮していることを示す様子を見て、そのときロミオはこう言ったのだった(たぶん、自分の不幸な人生が、そのような絶望的な終わりを迎えることになるのではないかと不安を抱いたのだろう)。「もし毒薬を必要とすることになったら、マンテュアの法律では毒薬販売は死刑になるのだが、この貧しいやつならばきっと売ってくれるだろう。」

 今やこの言葉が改めて彼の心によみがえってきた。ロミオはその薬屋を捜し出した。ロミオが金を差し出すと、薬屋は一応ためらうふうを見せはしたが、貧しいがゆえに拒むことができず、ロミオに毒薬を売ったのだった。その毒薬を飲めば、たとえ 20人力を持っていても、たちまちあの世行きだろう、と薬屋は言った。

 


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