No.117

 あと、大人になると、人間はとてもエッチになるので、のびたりちぢんだりというとみんなすぐにおちんちんのことを考えちゃうのだ(ああ、大人のおちんちんはのびたりちぢんだりするんだ。でも、みんなそれをはずかしいことだと思っているので、お父さんとかにきいたりしないほうがいいよ)。棒みたいなものが出てくると、それもじつはおちんちんなんじゃないか、と思ったりする。あるいは女の子は、おちんちんのかわりにわれめがついているので、すきまとかわれめとか出てくると、みんな女の子のわれめじゃないかな、と思ったりするんだ。そういうことを考えすぎて頭がおかしくなっちゃって、それで「アリス」をすみからすみまでさがして、棒だの穴だのわれめだのをかぞえてよろこんでる人たちも、ずいぶんいっぱいいるんだ。棒は78本あるんだって。バカだね。

 なぜこれが、大人に人気があるのかは、じつはよくわからない。わからないので、それをいっしょうけんめい考えているような、これまたひまな人もたくさんいる。こういう人たちのいうことは、まちがいなしにとってもくだらないので、あまりまじめにきいたりしないほうがいいよ。ひとは、なにかを見ると、ついつい意味を考えちゃうんだ。特にどっかで見たようなものを見かけると、なんか理由があってそれがそこにあったんだろう、とおもってしまう。

 たとえば変な夢を見ると、それがときどきずっと気になることがある。その夢に、なんか意味があるような気がすることがある。夢の中で、満員電車のむこうのほうにお父さんがいて、にこにこしてこっちをじっと見ている。でも、そのお父さんには影がない。満員電車なのに、どうして影がないのがわかるんだろう。でもわかる。そしておとうさんはずっとぼくを見ている。ぼくはそんな夢をみたことがある。すると起きてからも考えてしまうんだ。あのときお父さんは、なぜにこにこしていたんだろう、なぜ影がなかったんだろう、と。でも実は、それはぼくが頭の中でこしらえたお父さんの姿で、ほんとのお父さんじゃない。だから「なぜ」なんて理由があるわけがないんだ。でも気になる。


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