No.26

 「日本語しゃべれぇ!」と子ワシがいいました。「そんなむずかしいことば、半分もわからんぞぅ、それにもっというと、どうせあんただってわかってないんだろう!」そして子ワシは顔をかがめて、こっそりと笑いました。ほかの鳥たちは、きこえよがしにくすくす笑いをしています。

 ドードーは、むっとして言いました。「なにを言いたいかというと、からだをかわかすには、がくがくかけっこが一番だってことだよ」

 「がくがくかけっこって、いったいなんですか?」とアリス。べつにしりたいとも思わなかったのですが、ドードーがそこで口をとめて、だれかが口をはさむべきだと思ってるみたいだったし、ほかにだれもききたそうじゃなかったのです。

 ドードーは言いました「おやおや、一番いい説明は、じっさいにやってみることだよ」(冬の日なんかには、きみたちもやってみるといいぞ。だからドードーのやりかたを説明しておこうか)

 まずドードーは、なんとなく丸いかんじのかけっこのコースをつくりました(「せいかくなかたちはどうでもいいんだよ」だそうです)。それから一同みんな、そのコースのあちこちでいちにつきます。そしてだれも「よーい、どん!」といわないのに、みんなすきなときに走りだして、勝手なときに止まったので、いつかけっこがおわったのかなかなかわかりませんでした。でも、みんな三〇分かそこら走って、かなりかわいてくると、ドードーがいきなりどなりました。「かけっこおわり!」するとみんなドードーのまわりにむらがって、はあはあいいながら、ききました。「でも、だれが勝ったの?」

 この質問は、ドードーとしてもずいぶん考えこまないとこたえられませんでした。そこで、ドードーはながいこと、ひとさし指をおでこにあててすわりこみ(シェイクスピアの絵をみると、いつもこういうかっこうをしてるよね)、のこりはだまってまっています。とうとうドードーはいいました。「みーんな勝ったんだよ、だから全員が賞品をもらわなきゃ」

 「でも、だれが賞品をくれるの?」かなりの声がいっせいにききました。

 「そりゃこの子に決まってるだろう」とドードーは、アリスを指さしました。するとみんながアリスのまわりにむらがって、くちぐちにさけびます。「賞品! 賞品!」

 


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