No.38

 自分でもなぜだかわからないまま、アリスは小さな棒っきれをひろって、それをワンちゃんのほうにさしだしました。するとワンちゃんは、四本足でぴょんととんで、うれしそうにほえると、棒っきれにかけよってきて、それにかまけてるふりをします。そこでアリスは、おっきなイバラの後ろにかくれて、おしつぶされないようにしました。反対側から出てきたとたんに、ワンちゃんはもう一回、棒っきれにとびついて、それをおさえようとして頭からゴロゴロころがってしまいました。そしてアリスは、これはまるでばしゃ馬とあそんでるみたいで、いつふみつぶされるかわからないわ、と思いながら、またいばらのむこう側に走っていきました。そしてワンちゃんは、何度か棒っきれにみじかくとっしんをくりかえします。前にはほんのちょっとだけすすんで、それからおもいっきりさがって、そのあいだずっとワンワンとほえていました。そしてとうとう、ずっとはなれたところですわりこみ、ベロをだらりとたらし、息をハアハアいわせて、おっきな目を半分とじています。

 これは、にげだすぜっこうのチャンスだとおもったので、アリスはすぐにかけだして、かなりつかれて息がきれるまで、走りつづけました。ワンちゃんのほえる声は、もう遠くでかすかにきこえるだけでした。


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