No.6

    でも黒い子ネコは、午後の早い時期に顔を洗ってもらったので、アリスが半分ぶ つぶつ、半分眠りながら、大きなソファのすみに丸まっている間に、アリスが巻い ておこうとした毛糸の玉とせいだいにじゃれて、あちこちころがしてまわり、やが て毛糸玉はぜんぶほどけてしまいました。おかげで毛糸玉はこの通り、暖炉前のじ ゅうたんいちめんに広がって、そこらじゅうに結び目ができたりからまったりし て、そのまん中で子ネコが自分のしっぽを追いかけているのでした。   「まあこのいたずらっ子め!」とアリスはさけんで子ネコを抱え上げ、ちょっと キスをして、しかられているんだとわからせてあげました。「まったく、ダイナが もっとちゃんとしつけてくれないと! そうでしょ、ダイナ、わかってるわよね!」 とアリスはつけくわえながら、非難がましい目つきで年寄りネコのほうをながめ て、できるだけきびしい声を出そうとします――それから子ネコと毛糸を持ってソ ファにかけもどり、また毛糸を巻きはじめました。でも、あまり手早くはありませ ん。というのもときには子ネコに向かって、ときには自分に向かって、ずっとしゃ べりどおしだったからです。子ネコちゃんはとてもとりすましてアリスのひざにす わり、毛糸を巻くすすみ具合を見ているふりをしつつ、ときどき前足を片方出して 毛糸玉に軽くさわり、できるものなら喜んでお手伝いするところですが、とでも言 うようです。

 


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