No.16

 マーキューシオは死んだ。ロミオはもう我慢できず、ティバルトが言った、悪党などというさげすみの言葉をそっくり返した。そうしてロミオとティバルトは闘い、結局ティバルトはロミオに殺害された。

 この殺傷事件は、真っ昼間に、ヴェロナのまんなかで行われたので、そのニュースはたちまち大勢の市民をそこに集めた。その中にはモンタギュー卿やキャピュレット卿の姿もあり、それぞれ妻を連れてきていた。

 ほどなく、ヴェロナを治める公爵が自らやってきた。公爵はティバルトが殺したマーキューシオの親戚で、かねてから、自分の所領内における治安がモンタギュー・キャピュレット両家の争いによって乱されてきたので、罪を犯した人を法に照らして厳格に処罰しようと決意してやってきたのだ。

 ベンヴォリオは、この乱闘の目撃者だったので、公爵は彼に、事の起こりを述べよ、と命じた。ベンヴォリオは、真実を述べながらも、ロミオを傷つけないように、また、自分の友人たちが関係してくる部分はぼかしたりかばったりするように陳述した。

 


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