No.15

ロミオはティバルトとのけんかは特に避けたかった。なぜなら、ティバルトはジュリエットの親類で、ジュリエットのお気に入りだったからだ。それだけでなく、この若いモンタギューは、生まれつき分別があり、平和的でもあったので、一族の争いにはまったく参加してこなかったし、キャピュレットという名前は、今やロミオが愛する女性の名だったから、ロミオにとっては怒りをあおる合い言葉というよりは、憤りを押さえる魔法の言葉だった。そこでロミオは、ティバルトをなだめようとして、穏やかな口調で“キャピュレットさん”と呼びかけた。ロミオはモンタギューの一員であるにもかかわらず、その名前を口にすることに密かな喜びを感じているようだった。

 しかし、モンタギュー家の者すべてを、地獄を憎むように憎んでいたティバルトは、ロミオの取りなしに耳を貸そうともせず、剣を抜いた。マーキューシオはというと、彼はロミオがティバルトとの平和的関係を望む秘められた理由のことを何も知らなかったので、ロミオが自制しているのを、彼がおろかにも屈服してしまったものとみなし、ティバルトを口汚くののしり、はじめに起こったけんかを続けた。こうしてティバルトとマーキューシオは決闘した。そしてマーキューシオが致命傷を受けて倒れた。その間、ロミオとベンヴォリオは、決闘者たちを引き離そうとして努力したが無駄に終わった。

 


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