No.19

修道士は、ロミオの悲しみに対して哲学的な慰めを与えたいと思ったけれども、狂乱状態にあったこの青年は何にも耳をかさず、狂ったように髪をかきむしり、俺の墓の長さを測るのだ、と言って、大地にその身を投げるのだった。

 こういうぶさまな状況からロミオが立ち直ったのは、ひとえに彼が愛した女性から手紙が来たからであった。それによって少し元気になった。それを見た修道士は、その機をとらえてロミオが見せた女々しい弱気をいさめた。

 ロミオはティバルトを殺したけれども、自分自身を殺すことで、彼あればこそ生きている、彼の愛する人をも殺すつもりか、と修道士は言った。人間の高貴な容姿も、これを堅固にしておく勇気を欠けば、ただのろう人形にすぎないのだ、とも言った。法はロミオに寛大な処分をくだしたのだ、当然死罪になってもいいはずなのに、公爵はただヴェロナからの追放を君に課したにすぎない。彼はティバルトを殺した。しかし、ティバルトが君を殺したかもしれないではないか。ありがたいと言っていいだろう。ジュリエットは無事で、(願ってもないことに)ロミオの愛妻になっただろう。これこそありがたいことなのだよ。

 修道士はそういった幸福を指摘したのだが、ロミオはすねて、無作法な娘みたいにそのことを受けつけなかった。さらに修道士は、絶望する者は(と彼は言った)みじめな死を迎えてしまうのだ、よく気をつけておくように、とロミオをさとした。


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