No.20

ロミオがやや平静になったのを見て、修道士はロミオに、今後の身の振り方について提案した。ロミオは今夜、誰にも知られずにジュリエットに別れを告げなさい。それから、まっすぐにマンテュアへ行くように。ロミオはそこにいなさい、私が適当な時期をみはからって、ロミオとジュリエットの結婚を公表するようにします。2人の結婚は両家を和解に導き、喜ばしい結果をもたらすでありましょう。そうなれば、公爵はまちがいなくロミオをお許しになりますから、悲しみをもって出発したときよりも 20倍もの喜びをもってヴェロナに帰ることになりますよ。

 ロミオは修道士の賢明な忠告に納得し、いおりを出て彼の妻を訪ねることにした。その夜は妻と共にすごし、夜明けを待ってひとりマンテュアに旅立つつもりだった。マンテュアには、修道士がときどき手紙を出して、故国の状況を知らせることを約束した。

 その夜、ロミオは愛する妻とすごした。前夜ロミオが愛の告白を聞いたあの果樹園から、ひそかに寝室へ入れてもらったのだ。2人は純粋な愛と歓喜の一晩をすごした。しかし、この夜の楽しさ、そして2人が共にある喜びは、やがて離ればなれにならなければいけないという見通しと、過ぎし日の致命的事件の影によって、悲しみの彩りを添えられていた。来なければいい夜明けが、早く来すぎるように思えた。ジュリエットは、ひばりの朝の歌を聞いたが、夜鳴くナイチンゲールだと思いたかった。しかし、歌ったのはまちがいなくひばりであって、その声が不快な不協和音のようにジュリエットには聞こえるのだった。東の空にあがる朝日の光もまた、まちがいなく2人の別れの時を示すのだった。


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