No.28

ロミオは燈火をたよりに、自分が殺した相手が誰なのかを見に来た。その人はパリスであり、(マンテュアから来る途中で知ったのだが)ジュリエットと結婚するはずだった人と知り、その死んだ青年の手を取って、不幸にも道連れとなった人として、今彼がひらいた勝利の墓、すなわちジュリエットの墓に埋葬してやろう、と言った。

 墓の中にはロミオの愛しい人が横たわっていた。死すらこの並びなき美しさを形成する目鼻立ちや容姿を変化させ得なかった人のようであったし、死に神がジュリエットを慕って、なぐさみのためにそこへ置いているように見えた。なぜそう見えたかというと、ジュリエットの体はまだ生き生きとして花のようだったからだ。これは、ジュリエットが麻酔剤を飲んだときには眠りに落ちていたからである。

 ジュリエットの傍らに、ティバルトの血に染まった経かたびらを着た遺体があった。ロミオはそれを見て、死体に許しを乞い、ジュリエットへの愛から彼を“いとこ”と呼び、君の敵だった自分を殺すことで、君のために尽くすつもりだ、と言った。

 そうしておいて、ロミオは愛人の唇に接吻して、最後の別れを告げた。それから、うみつかれた肉体から、不運の星がロミオに背負わせた重荷を振り落とした。つまり、薬屋が彼に売った毒を飲んだのだ。その毒の効き目は、確実に人を死に追いやるものであった。ジュリエットが飲んだ偽装薬とは違っていたのだ。その薬の効果は今やさめかかっており、ジュリエットは目覚めようとしていた。ロミオが約束を守らなかったとか、来るのが早すぎたとか、そういったたぐいのことを言おうとしていた。


< back = next >

Link
mobile